産経新聞が「裏本の死」

ソース(産経新聞)

(あくまで産経新聞の記事に関してビジネスの部分で語っているので、語っている内容は年齢制限的な内容ですが、評論のためですのでご了承ください)

リンク記事は懐古の部分で書いているが、ネットだけの問題ではない。もちろん、ネットの影響は甚大だが、実際の理由はもうちょっと複雑だと思う。

まず、おおまかな引用を先に書くので、その後の追記を参照してほしい。

 

昨年秋、インターネットで次のような一文を見つけた。

 「告知:裏本は発売されなくなりました。今後は裏ビデオの情報をのせていく予定です」

 アダルトの違法サイトであるホームページに「裏本の死」が宣告されていたのだ。一つの表現が終わったことを知らせるものとして、昨年、最も記憶に残る事件の一つだった。というのも、ピンク映画の歴史がきちんと残されていなかったことを、つい最近知ったばかりだったからだ。

 『素晴らしき日曜日』から『蜘蛛巣城』の最も良質の黒澤明作品をプロデュースした本木荘二郎氏のことを調べていたときに、ピンク映画の歴史を調べる必要が生じた。本木は、ある事件で東宝を解雇されるような形で離れ、黒澤明とも袂を分かち、その後、ピンク映画のパイオニアの一つと称される『肉体自由貿易』という作品を監督し、生涯に200本あまりの作品を監督したと伝えられている。1977年に新宿の安アパートで死んだ本木は、いまは文京区小石川の伝通院に隣接する真珠院に無縁仏同然に眠っている。

 本木の作品群について調べようとしたとき、映画そのものの視聴どころか、記録さえほとんど入手できなかった。こういった歴史は関係者がいなくなると、まったく残らない。そのため余計に「裏本は発売されなくなりました」という一文は印象に残り、2006年は裏本が死んだ年として私には記憶されることになった。裏本も記録は残らず、記憶だけが残ることになるのだろう。
(産経新聞『「裏本の死」の宣告 息の根を止めたのはネット?』ソース部分引用・以下略、浜野保樹/文)


もともと裏本は「かばん屋」と呼ばれる配刊の人が新刊を売りに来るメディアで、昔はもっと露骨にヤクザ稼業ぽかったし、出ている人も訳ありだった。(配刊システムは印刷所や出所をよくわからないようにするためと、数のコントロールをしていくためのシステム)。

裏本は、局部表現自体は簡単にできるので、逆に本の構成や表情が問われるため、一部の好事家には大変人気があった。

裏本はネットに負けたとあるが、実際はDVDにまず負けたのだと思う。
裏本の事情を理解するには、裏ビデオからDVDの流れを見ないと解けない。

裏ビデオの話にちょっと逸らす。
あちらも初期は撮りおろしで訳ありモデルぽいものが殆どだった。
しかし、裏ビデオがだんだんと普及し、いつのまにか表AV会社から倒産解散の債権、スタッフによる盗難流出で有名AV女優の無修正マスターが流れていくことになり、撮りおろしは傍流になり、AV流出ばかりが全盛となる。その場合は事故・債権などのアンダーグラウンドの話なので(回収された債権がヤクザに流れるなどは、一般のコンテンツ会社でもよくあること。アニメ会社の版権でよくその話を聞く)、関係者も捕まることは殆どないし、出る人も飛躍的にレベルが上がる。

そのうちだんだんと確信的になっていき、裏ビデオもいつのまにかAVの2次使用といった位置を築く。

また売り手の裏ビデオ店にとってもメリットが多かった。各1本仕入れればコピーソフトも作れたからだ。業務用テープを利用し自力でダビングすれば、原価が数百円になる。

DVDが出始める頃には、アメリカの製作会社(ちゃんと実態があるところも、ダミーもあるが、形式上はUSで製作しなければならない)を経由された日本輸入版といったものにまで法的な体裁が成長してしまった(最近は明らかに日本で撮影しUSで堂々リリース、ネットで個人輸入できるようになってしまっている。もちろん国内は違法だし、税関で引っかかれば廃棄だが)。

それの「コピー品」が歌舞伎町などで売られている形になっている。「売り手」も最初は、互換性の薄い機種を使うなど、DVDのコピーに試行錯誤していたせいで、DVDでありながら互換性がない、また画質がネット画質(ネットのコピー)などの問題もあったが、現在は互換性のレベルも上がり、ほぼ質は安定している。

メーカーに話を戻すと、US法人を作っているのは実質的に多くがAV会社なので、USで出すことのメリットとしては「裏に流す必然」がなくなった(逆に表裏一体の存在となってしまったので、メーカーがグレーゾーン化している)。

法律的な問題がクリアされるので(少なくともUSでは)、裏DVDであっても、メーカーが著作権などを主張することができるようになった。(某裏ビデオ情報誌が、ネット配信かDVDの特定メーカーに再掲載拒否を受けたのはこれが出来るようになったためではないかと思われる)
また、USからの発注で下請けのAV製作会社が撮っているという体裁ができることで、ユーザーが勝手に輸入しているため、メーカーとしてはUS内での合法ビジネスであるというたてまえができるということだ。つまりアメリカのAVを手伝ってます、US用に作ってますが、ユーザーは勝手にお土産でもって帰られているんでメーカー側は知りません、のような形ができる訳だ。

問題点は日本の法傘下でなくなってしまうため、国内からダウンロード販売用のデータをアップロードしたなど以外の手段では、摘発が不可能になってしまうこと。
登記やビザ以外の部分で、警察サイドからの実態がつかみづらくなること(米国側では、納税で状況を把握できるが)。

本題に戻る。
裏本が売れなくなった理由は4つくらいある。

ひとつは裏・表を問わず、ビデオ・DVDの普及により書店売りのエロ本でさえDVDをつけても売れなくなっている。ビデオのほうが手に入りやすく簡易で声も出るし絵も動くし、倫理基準も付録類より過激。表の雑誌さえ売れないのに裏本も本というオールドメディアだから売れない。また配刊システムみたいな古い流通が変わることがなかったこと。それが最初の原因。

2つめは、裏ビデオのほうがシステム化されていく過程で、裏本も気がつくと(売れなくなったせいもあるでしょうが)外注化され、AV会社により普通の表AVと一緒に撮影されていったりして、また普通にモデルもレベルが上がり、なんら普通のAVと変わりないつまんない裏本が増えた。この、モデルを含め(昔は裏本はどこでも見ないような裏本専門のモデルがいた)専門家や技術者が減って、ノーマルに流れ作業でこなされていく裏本が増えて、つまんなくなったのも原因。

ビデオ(DVD)のほうが、アマチュアグループによる撮りおろしの「援交」ものなど、撮りおろしで年齢的な理由などでより表向き流すことが不可能な、明らかに違法な作品が増えて、そこまで費用対効果のあわないことはできない「裏本」がそれに対してコンテンツ的には大変弱くなったことも1つ。

もう1つの原因は、裏本はもともと国内では表向きには存在しない本ということになっており、著作者も不明なので(特定されると捕まる原因になりかねない)まず著作権を主張されることがなかった。かつては印刷というハードルがあるため、コピーソフトが出回らないというだけのことで、印刷すれば劣化するが、ネット上ならスキャンデータでもいいという人は意外に多く、権利の不明瞭さをついて海外サイトや違法マニアサイトでスキャンされ、ネットで簡単に無料閲覧されるようになると、本はモデルファンのコレクター以外は買わなくなってしまった。店側ではDVDはコピーで限りなく原価を下げられたが(前述)、本は複写すると品質が著しく下がるため、販売店ではコピーで売るには割りが合わないという面もある。

裏本産業自体は古いメディアなので壊滅しても仕方ないが、それによって裏ビデオ・裏DVDの世界は表側と裏側の境目がかなり曖昧化してしまっている。

たとえば表ビデオメーカーは体裁上は「(アダルト業界の中での)正業」を行っていることになっていたので、元々かつては裏流れなどのアングラマネーを扱う側とは分かれていた(ことになっている)のだが、米DVDを扱うことや、原盤製作の外注として受けたり原盤を売ることで、その境目が曖昧になっているという問題を感じないでもない。


ここからはCDの話。

音楽も出版も構造不況業種と言われ、売り上げを減らしてきた。そんな中、まだ規模は小さいものの、ネット配信は着実に売り上げを伸ばし、市場の減少分を補うものとして期待が高まっている。特に携帯電話への配信ビジネスは、売り上げの伸びが大きい。しかし、最近こういう話も聞いた。アジアでは海賊版CDが激減しているという。なぜならインターネットの違法配信が海賊版のビジネスまでも崩壊させているからだと。まだまだ混乱が続きそうだ。(産経新聞『「裏本の死」の宣告 息の根を止めたのはネット?』ソース部分引用・前略、浜野保樹/文)

あと、元記事ではアジアのCD海賊版が減った理由をネット配信といっているが、実際は「MP3」プレイヤーの普及(決してネットではなく)と規制の影響もある。規制の影響なら喜ばしいし、堂々と売れなくなり、逆にアングラ化してまずいとも言える。

インターネットの違法配信はたしかに最近のアジア系サイトでは大変激しいものがあるが、海賊版よりは被害も(アクセスから)捕捉しやすいし、そもそもアジアの著作権違反を放置しているのは、政治的な力関係からものを強く言えない日本のほうだ。(ネットは日本でもダウンロードできるのでそういった本も多く出ている(下記)が、向こうではクチコミだ。むしろ海外経由で日本国内からの被害のほうが大きくなってると思われる)

闇市で立ち上がった戦後の新宿が(大筋では)正業の街に変化していったように、最初は違法需要でも「立ち上がっている市場」を、合法に変えていくことのほうが本来的なビジネスだと思う。漫画がかつてアジアで違法流通していたものを、そういった先行業者をとりこんで正規版として出すようになった経緯をもう少し筆者は理解したほうがいい。

●関連リンク
神保町アイドル書店 相次ぎ「裏本」摘発の意外な事実  ←こんなのもある。もしかして産経は相当好きなのか。



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One thought on “産経新聞が「裏本の死」

  1. 裏本が消えた-発売されなくなった裏本の裏側

    裏本大全集さんのトップページに気になる告知が…「告知: 裏本は 発売されなくなりました。」とあります。
    調べてみると2006年の新刊はわずか12本と流通自体が激減している事がわかった。これは一体どういう事なのか?裏本は??

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